明治時代に道路が整備されると多くの湯治客が集まるようになり、温泉地は次第に拡大し、現在の一大観光地の礎が築かれていきました。湯治客が集まるところには土産物が付き物。1914(大正3)年に産物を扱う大黒屋民芸店を始めたのが坂井さんのおじい様です。甘いものが貴重な時代に作られた「湯乃香ひょうたん飴(あめ)」は、土産物として人気を集め、今も素朴な味わいが愛されています。
当時、温泉の効果とともに地元の人々に知られていたのが付近に自生するえぞ熊笹(別名:根曲り竹、学名:チシマザサ)の薬効でした。山菜としても人気のある根曲り竹は孟宗竹よりも古くから北海道以北に自生する大型の笹。大きな葉は幅5センチ、長さ20センチほどにもなります。近隣に生息する熊は大量の笹を食べて栄養を蓄え冬眠に入り、目覚めると英気を取り戻すためにまた笹を食べたといわれます。緑の血液ともいわれ「熊笹」と呼ばれるのもそのためです。地元では笹団子やちまきを包むために使ったり、お茶として常用していました。