11月18日、台北市内で、中韓FTA(自由貿易協定)の影響について記者会見する台湾の杜紫軍経済部長=経産相、右=ら。「後発」だった韓国に先を越された危機感がにじんだ=2014年、台湾(田中靖人撮影)【拡大】
台湾と中国は10年、事実上のFTAに相当する「経済協力枠組み協定(ECFA)」を締結。先行実施項目(アーリーハーベスト)として、台湾から中国向けで539品目の関税を自由化した。だが、台湾では13年に締結した「サービス貿易協定」の批准に反対する学生らが今春、立法院(国会)の議場を占拠するなど、過度の対中依存に対する反感が噴出した。この影響で「物品貿易協定」の協議は中断し、当初目標だった14年内の妥結は絶望視されている。
「跳板」としても価値低下
中韓両国がFTA交渉を始めたのは12年で、台湾としては「後発」の韓国に追い抜かされた形になった。杜紫軍経済部長(55)=経産相=は19日、「自分は寝ていて動かず、韓国にゆっくり歩くよう期待することはできない」と述べ、韓国に後れを取った原因は台湾側にあるとの認識を示した。
中韓FTAによる打撃は、対中輸出だけに留まらないとの指摘もある。台北のシンクタンク、中華経済研究院の王健全副院長は11月16日付の中国時報への寄稿で、中国市場に進出する「跳板」としての台湾の価値が下がるため、外国から台湾への投資額が減少するなど、長期的な経済成長に悪影響を及ぼすとの懸念を示した。