≪脱デフレ最優先 目立つ踏み込み不足≫
政府、経済界、労働界の代表は16日、「政労使会議」を開き、2015年春闘での賃金引き上げの実現を盛り込んだ合意文書をまとめた。「アベノミクス」による経済の好循環を継続するには、前回に続く賃上げが“即効薬”になることは間違いない。総選挙で信任を得たアベノミクスへの協力では労使の足並みがそろっており、春闘の焦点は具体的な賃上げ水準に移る。
2年連続の「異常事態」
合意文書は、今秋の会議再開後の焦点となっていた年功賃金制度の見直しは一案とするにとどめ、事実上先送りするなど踏み込み不足も目立った。
背景には、4月の消費税率引き上げ後に個人消費が低迷し、景気回復がもたつく中、デフレ脱却を最優先とすることがある。労使の考えの違いが大きい年功賃金制度を棚上げし、労使が一致できる賃上げに議論を集中させる狙いだ。
本来は労使の交渉で決まる賃金に関し、2年連続で政府が介入する“異常事態”となったが、「今の日本経済は危急存亡の時で、政労使は不退転の決意でデフレから脱却しなければならない」(経団連の榊原定征(さだゆき)会長)など、賃上げの重要性に対する考え方は労使とも一致している。