1984年12月19日、香港の主権返還を決めた「中英共同宣言」の調印文書を交換する中国の趙紫陽首相(右)と英国のマーガレット・サッチャー首相。趙首相の奥には当時の中国の最高実力者、●(=登におおざと、とう)小平氏の姿が見える=中国・首都北京市(AP)【拡大】
しかし中国は、長官選への1人1票の制度導入を07年から17年まで遅らせた上、民主派の立候補を事実上認めないとの基本法にはない前提条件を今年8月に突きつけた。
普通選挙の名のもと、実際は中国共産党政権が認定した人物を長官にすえ、その後に控える立法会の議員選でも同じ制度を適用、結果的に親中派が香港の行政も立法も牛耳る工作だ。
さらに先月、中国は英議員代表団の香港入りを拒否した際に、英国との共同宣言は「現在は無効」と通告したという。中国は、英国との共同宣言に強制力はないとねじ曲げ、主権を有する香港の問題は「すべて内政」で、英議会の動きには強硬に「内政干渉だ」と主張して譲らないだろう。
台湾統一工作の先行実験
中国が「港人治港(香港人が香港を治める)」との50年間の高度な自治を保障した国際公約を、いとも簡単に踏みにじろうとしている様子を北京での調印から30年の今年、国際社会は目の当たりにした。共同宣言を反故(ほご)にする中国への不信感は広がるばかりだ。