日頃身に着けている衣服の素材として、最も身近な天然素材であるコットン。古来、世界中の人間はこの天然素材を身に着け、日本でも16世紀以降に三河地方をはじめとした肥沃(ひよく)な地域で大量に生産され、着物から肌着まで日本人の暮らしに深くなじんできた。「Re-design ニッポン」の第8回は、この身近な素材とその生産現場を取り上げる。
「工業製品」化した綿
日本で消費されるコットンのうち、99%以上が原料となる綿花の栽培過程で農薬や殺虫剤を使い、生産過程では化学漂白剤などが大量に用いられている。世界全体で用いられる農薬全体のうち、15%以上が綿花栽培に使われているほどだ。また栽培過程では、大量の水を必要とする。雨量が少ない地域では灌漑(かんがい)で生産するようになっているが、結果として地下水や河川などが枯渇する事態を招いている。さらに生産過程で大量の化学漂白剤を用いるため、水質の悪化のみならず、着用時にアレルギー症状などを引き起こすこともある。
つまり、植物性の天然素材であるコットンは、事実上、工業製品になっているのである。本来の天然素材のコットン製品の良さを伝えるために、生産過程からこだわって作り続けている奈良・大和高田の「村上メリヤス」を訪ね、社長の村上恭敏さん、奥さんの令子さんのお話をうかがった。