賛同得やすいテーマから
安倍政権が与野党の賛同を得やすいとにらむのが、「緊急事態条項」や「環境権」の創設だ。緊急事態条項とは、有事や大規模自然災害などが発生した事態に対処するため、国民の権利の一部を制限して首相の権限を強める規定を指す。世界のほとんどの憲法にこうした規定があるが、日本の現行憲法にはない。11月6日の衆院憲法審査会では、共産党を除く7党が緊急事態に対処するための規定を設ける必要性に言及した。
各党間の調整で緊急事態条項を盛り込んだ憲法改正案が衆参両院の3分の2以上の賛成で発議されれば、国民投票に委ねられることになる。今後、こうした議論が進めば、憲法改正の是非が国民的議論につながっていくことが期待できる。
緊急事態条項や環境権といった賛同を得やすいテーマを最初の議案に選び、これまで一度もなされてこなかった憲法改正の流れを作ることは極めて重要だ。
では、9条改正はどうか。
集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定をめぐっても、「徴兵制につながる」「軍事大国になる」といった歪曲(わいきょく)した批判が飛び交った。国家の安全保障の根幹である「軍」の保持を明記した憲法に改めることこそ憲法改正の本質だが、9条改正は首相にとって時間との戦いといえそうだ。(峯匡孝/SANKEI EXPRESS)