鎌倉にはそんな事情を抱えた邸宅が少なくない。
住む人がいなければ家も庭も荒れてしまう。維持、管理にも費用がかかる。かといって、手放してしまえば、集合住宅が建つか、小さな建売住宅に細分化されるか。それもまた、しのびない。どうしたらいいのか。邸宅の主である女性は考えた。
≪輝く「光の泡」 冬の鎌倉に走る≫
急勾配の坂道を上がると傍らに「ここの地盤は海抜15メートル」の標識。海辺からほんの少し高いだけで、周囲は山里の趣に包まれる。参道の両側にはそれぞれ「行時山」「光則寺」と書かれた石柱。邸宅はその内側にあり、お寺の土地に建てられている。
ふだんは人けのないその邸宅の庭に、勤労感謝の日には午前11時を過ぎたあたりからたくさんの人が訪れた。
鎌倉散策を楽しむ人たちが邸宅の内部に入る機会はあまりない。旧前田侯爵家別邸だった鎌倉文学館のように、公共の施設として一般に公開されているものもあるが少数だろう。