「日本」と自分らしさ
研修先の大学院の先生のアドバイスで、装身具ジュエリーのデザインからドローイングに転向した。作品の中には、キプロスの宗教的な影響も見られる。
紙川さんは外国で創作活動をすることについて、「日本人のアイデンティティーをどう作品に出すか、ということは考える。分かりやすくて日本らしいものを簡単に求められることもあるが、自分のアイデンティティーとは違う。どう作品を通して自分を理解してもらえるか、いつも悩んでいる」と話した。
工場は繁栄の象徴
イギリスで学んだ岩崎貴宏さん(39)の「アウト・オブ・ディスオーダー(川崎シリーズ)」は、布や糸を使って、工業地帯のシンボルともいえる工場プラントの鉄骨や送電線、煙突、タンクなどを緻密に作り上げている。
「工場は、子供の頃は繁栄の象徴で、ぼくたちの生活を支えてくれていた。朽ちていくユートピアのようなものを作品に残したかった」。岩崎さんによれば、工場は海や川に排水を流すせいか、海や川に向かってデザインされている。川や海から見ると、お寺の伽藍配置に似た魅力があるという。