「夜の木の下で」(湯本香樹実著/新潮社、1300円+税、提供写真)【拡大】
その姿勢があるからこそ、“過去”を“今”と線引きすることなく、香りや色合いもそのままに、登場人物、そして読み手の前に出現させることができる。
「かつての出来事を、現在の立場からジャッジするようなことは、すごく物事を狭めて貧しくしてしまうような気がして。それよりは、その中から豊かさを見いだしていきたい」
「あいまいなこと」こそ
『夏の庭』の刊行から20年以上。小説はもちろん、絵本などにも活躍の幅を広げてきた。「昔はあいまいなこと、答えが出ないことに答えを出そう、なんとかつかまえてやろうとしていた。もちろんそれは必要なことなのだけれど、今はあいまいなことがあるから豊かなのだと思えるようになってきました。あいまいなものと、くっきりしたもの。そのバランスがその人のありようを決めていくのかもしれません」
今作では短編の楽しみを改めて思い起こさせられたという。「また短編書きたいな、と思っています。非常にささやかだったり、名付けられることのないふれあいなどを描いていきたい」