「天に登る」コイ270匹
京都府立文化芸術会館館長の下田元美(もとよし)さんは数年前の祇園祭の際、室町通の帯問屋の店先に掛けられた巨大なタペストリーに目を奪われた。「イキのいい仕事をしている人がいるな」。270匹のコイはまるで天に登るかのように描かれていた。そして、「勢いとすっきりとしたデザインは完全に琳派だ」と思ったという。それがキーヤンとの出会いだった。
「(キーヤンは)理屈をこねることを嫌い、直感を頼りに生きることを選んできた。どの壁画も見る者にそのことを語りかけてくる」と下田さん。
宗達は迷うことなしに描いたと思われるが、キーヤンの筆にも迷いは見られない。描くのはもっぱらスケッチできる動植物。「意匠化された動植物や大胆な配置、そしてデフォルメと省略の妙。これらは宗達がたどりついた美意識と重なる」。こう説明する下田さんは、自信を持って言い切った。