最初はブロックを組んで鍋で煮詰めていた塩だが、徐々に地元の仲間が海水のくみ上げや薪集めを手伝ってくれるようになり、今では三段の登り窯になった。「誰か思いがある人に引き継いでもらわないと」と智恵子さんが思っていたところ、手を上げたのが良太さんだった。
母の思い受け継ぐ
良太さんはもともとフレンチのシェフ。「料理人だと朝から晩まで調理場の中でしょう。仕事場にいながら子供の成長を見守れるような暮らしをしたかった。地元も好きでしたしね。何より、『いいものを作ろう』というおふくろの思いを継ぎたかった。おふくろが『金をもうけよう』と思って塩を作っていたら、後を継ごうとは考えなかったでしょうけどね」
とはいえ、簡単な仕事ではない。1日最低でも10時間は工房に立ち、窯の様子を見守る。温度や湿度、海水の濃度によって微妙に火入れの加減も変えなければならない。仕上げの段階では、2~3時間、数十キロの塩をかき混ぜ続ける。