農業や教育予算を抑える一方、企業や研究機関の競争力強化を後押しするため、人工知能(AI)やロボットの研究開発支援の予算を手厚くした。経済の生産性を高め、成長戦略を加速する狙いだ。
国益を意識した政策も盛り込まれた。防衛費は14年度より1000億円増の予算を確保。離島防衛や日米の防衛協力を見据えた装備品強化を重視した。在外公館の新設など対外発信力の強化策もほぼ満額認めた。慰安婦問題に対する事実誤認などを踏まえ、国際社会での日本の発信力を強化する。昨年12月の衆院選での与党大勝という信任を背景に、随所に安倍首相の意向の反映がうかがえる。
社会保障費1兆円増
ただ、歳出改革への取り組みは力不足だ。昨年夏時点の財政収支の見通しは、PBの赤字半減目標を達成する水準から7500億円程度歳入に余裕があった。しかし、予算案では高齢化による経費の自然増を抑えきれず、社会保障費は前年度より1兆円増えた。消費税再増税の延期もあり、PB目標は「税収が増えていなければ達成できなかった」(財務省)。税収増分だけでは、自然増もまかないきれず、安倍首相が掲げる「経済再生と財政健全化の両立」に向けた予算の効率化では課題が残った。
日本の借金はすでに1000兆円を超えており、成長と財政再建の二兎(にと)を追うかじ取りは安倍政権の宿命でもある。経済成長に必要な予算を確保していくためにも無駄の徹底排除が欠かせず、政権の強い意志が問われている。(小川真由美/SANKEI EXPRESS)