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書物は華氏451度で燃え上がる 世界から「紙の書物」が少なくなっていく前に 松岡正剛 (3/5ページ)

2015.1.20 14:55

【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)

【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)【拡大】

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 【KEY BOOK】「華氏451度」(レイ・ブラッドベリ著、伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫、929円)

 主人公のガイ・モンターグは焚書官である。時の政府が制定した法律に従って市民がいまだ隠しもつ書物を捜し出して燃やすという役目だ。しかし、その町で最後の「聖書」を見たとき、ためらった。そのうち、住民の一人ずつが書物化していることに気が付いた。これはもはや焚書の対象ではない。書物というもの、なるほど人間と一緒くたになるものだったのである。ブラッドベリのSFとして、いまなお愛書家を泣かしている名作だ。

 【KEY BOOK】「薔薇の名前」(上下、ウンベルト・エーコ著、河島英昭訳/東京創元社、各2484円)

 中世修道院のスクリプトリウム(図書館)をめぐる秘密に挑んだエーコの傑作中の傑作。修道士ウィリアムは或る殺人事件の調査に修道院を訪れ、特別の本にかかわった者が殺害されたことを突きとめる。キリスト教が長らく隠していた「反信仰本」が関連していた。エーコが「書物の両義性」にスリリングに肉薄した小説としてもたいへん得難い。どんな書物も、それを読む立場からすると良書にも悪書にも、薬にも毒にもなるものなのである。

電子書籍よりも「紙の書物」のほうが…

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