【BOOKWARE】
今日11月23日は樋口一葉が亡くなった日だ。24歳だった。若くして比類ない才能を世に煌(きら)めかせて、慌ただしく消えていった。一葉がいなければ、与謝野晶子も尾崎翠も江國香織も、いなかったろう。しばし偲びたい。
長谷川時雨は『近代美人伝』に「一葉は蕗(ふき)の匂いと、あの苦み」と評した。さすが時雨だ。ぴったりの表現だ。明治大正昭和の女たちの才能を一番見抜いていた時雨は、「あたしにゃどうしても書かなければならないことがあるのよ。それはね、一葉のことだよ」と言って亡くなったのである。24歳の才能はそれほど図抜けていた。
一葉の資質は、早くも少女のころに草双紙や滝沢馬琴を読み耽っていたことに発していたようだが、中島歌子の歌塾「萩の舎」(はぎのや)で和歌と古典を習って源氏を叩きこまれたことで、さらに磨かれた。それなら、そのまま明治を代表する歌人になっていてもおかしくなかったのだけれど、家が大変になっていった。父と兄が死に、一葉は17歳で戸主となって一家を支えなければならない。本郷菊坂で母子3人の面倒を見るため、針仕事を強いられた。