【BOOKWARE】
ある日、サイバードのCEO堀ロバート主知君から「松岡さん、ぼくの夢をかなえる物語ゲームを作ってください」という声がかかった。堀君とは、ぼくが「日本一のマダム」と呼んでいる母上を通しての知り合いで、これまでそれなりの付き合いはあったのだが、こんな意外な仕事の依頼がくるとは思わなかった。
聞けば、子供の頃にキット・ウィリアムズの『仮面舞踏会』(マスカレード)という謎めいた絵本を読んだのだが、その「謎」がどうしても解けなくて悔しい思いをした。いよいよサイバードもスマホ対応ゲームを制作リリースできる準備が整った。ついては、世界30カ国対応の難問を秘めた物語をゲームにしたい、そのディレクションをお願いしたい、電子書籍を凌駕するものも狙いたいというのだ。
これは大変な注文だ。ブックウェア的な編集力や編集装置性がいよいよゲームになるわけだ。ただしそれを150字ずつで進む物語にしなければならず、そこに容易には解けないとびきりの謎を仕込んでいかなければならない。さっそくチームを準備して、岡村豊彦君や宮崎慎也君たちにシナリオメーキングにとりくんでもらいつつ、一方で劇場型にゲームが進行するアーキテクチャをあれこれ構想することにした。