【BOOKWARE】
日本で唯一のライプニッツ著作集が工作舎から刊行されている。工作舎はぼくが1971年に立ち上げた出版社ではあるが、この著作集の仕掛人は一から十までが十川治江だ。しかもいまは全10巻だが、さらに続刊を計画している。数理にめっぽう強い十川のライフワークにふさわしいと思って、強く唆(そそのか)した。さっそく逗子の下村寅太郎さんを中心に翻訳編集体制が整えられていった。
第1巻刊行は1988年の冬。ぼくはすでに工作舎を引いていたが、装丁とエディトリアルデザインは杉浦康平さんが引き受けてくれた。とても知的に美しく、とてもライプニッツめいている。3年をへて配本を了えた。日本で最も刺激的な容貌を発揮している数理的な著作集なのではないかと思う。
小出版社が巨人ライプニッツの著作集に挑むなんて大変な仕業だ。だいたい何を収録するかだけでも戦争のようなもので、本場のドイツでも200巻を超えるライプニッツの完本がまだ完成していない。しかし、挑戦するにふさわしい巨人なのである。ライプニッツによって、世界の見方はそれ以前とそれ以降に大きく分かれたのだ。だからその著作集を揃えることは、世界哲学史に幅の太いキラキラと輝く日付変更線を立ち上げるようなものなのだ。