【BOOKWARE】
日向子(ひなこ)が咽頭癌で亡くなってから約10年がたった。まだまだこれからという46歳だった。
日本橋の呉服屋に生まれた。兄貴からはロックやサブカルを教えられ、高校時代は大相撲にぞっこんになって、魁傑(かいけつ)の大ファンになり、日大芸術学部に行ったものの授業がとてもつまらなく、稼業を手伝いながら手描き友禅に憧れるうちに、稲垣史生の時代考証学に惹かれて「ああ、これだ、これで行こう」と決断すると川越の稲垣の自宅に3年通った。稲垣が時代劇の時代考証を一手に引き受けていたころだ。日向子の唯一のセンセイは稲垣なのである。
22歳で「ガロ」で吉原を題材にしたマンガでデビューすると、たちまちやまだ紫・近藤ようことともに“ガロ三人娘”と呼ばれたが、徹底した時代考証は日向子の右に出る者はいなかった。『合葬』『風流江戸雀』『ニッポニア・ニッポン』『百物語』『ゑひもせす』『百日紅(さるすべり)』『とんでもねえ野郎』などで、江戸情緒と江戸怪奇と江戸日本人の風合の真髄を描き続けた。