【KEY BOOK】杉浦日向子『百日紅』下(ちくま文庫)734円
浮世とは何か、鬼火とは何か、色っぽいとは何か、心中とは何か。これがわからなくてはニッポンじゃない。加えて日向子は「あきらめ」が必要なんだとも言いたかった。それが「粋」だとも描きたかった。英泉や国芳や井上政女(北斎の弟子で愛人)などを配して、お栄の日々にはますます「粋」という風が吹く。表題の百日紅は、加賀の千代女の「散れば咲き散れば咲きして百日紅」を想わせる。いや、夭折した日向子を想わせる。
【KEY BOOK】杉浦日向子『百物語』(新潮文庫)907円
ぼくは千夜千冊では迷わずこれを採り上げた。「小説新潮」に足掛け8年にわたって連載された傑作だ。1表題は浅井了意の『伽婢子』(おとぎぼうこ)の最後に出てくる「怪異な話が百話になったとき、必ずや怪しきことがおこりまする」に由来する。小鳥屋が入手した掛軸の顔が消えた話、番町の医者の娘が旗本の息女のところで駕篭の中に見た黒髪の姫の話など、怖いようで懐かしい経緯が次々に出てくる。日向子はこれらの話の片隅で生きていた。