【KEY BOOK】杉浦日向子『ニッポニア・ニッポン』(ちくま文庫)562円
「日本感覚」に寄せる日向子の才能とセンスが横溢する短編が11本入っている。そこには馬風庵のセンセとおかつ坊と若のやりとりが、異国の少女メアリーと吉蔵の甘酸っぱい記憶が、冥土の花嫁の消息が、明治の初めの青年の誇らしい送別会が、それぞれ着色写真がカタカタと動くように配列されている。そう、いまやわれわれは、自分たちの香ばしい記憶を失いつつある絶滅危惧種のニッポニア・ニッポンなのである。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)