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『失われた時を求めて』を求めて 誰だって子供の頃はマルセル・プルーストなのである 松岡正剛 (1/5ページ)

2014.9.21 14:40

【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)

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 【BOOKWARE】

 誰だって記憶を手繰りよせたいアンビバレントな幼年時代というものがある。あれは何だったのか、できれば時を溯って確かめたい未熟な時間というものがある。

 プルーストである「私」は幼年時代を故郷のコンブレーに過ごした。そこには幼な心にとってはすこぶる象徴的な二つの道があって、ひとつはスワン家の方へ、もうひとつはゲルマント家の方へ向かっていた。

 スワン家には一人娘のジルベルトがいて、「私」は初めて異性を感じた。ゲルマント家には公爵夫人がいて、高貴なるものにひそむ震えを感じた。大作『失われた時を求めて』は、この二つの道のどちらをも選びきれなかった少年プルーストが、その後の複雑きわまりない大人社会の波濤の中で、どのように幼年時代の失われた香ばしい亀裂に回帰できたかという物語になっている。

 恥をさらすようだが、実はぼくが早稲田のフランス文学科に入ったのは、プルーストを原文で読むためだった。同級生に万之助(中村吉右衛門)がいた。だが結局、早稲田時代は学生運動に熱中して、プルーストを原文で読み切れる語学力はつかなかった。

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