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【日本遊行-美の逍遥】其の十六(中川木工芸 比良工房・滋賀県) 個性豊かな木桶 ともに生きる (2/5ページ)

2015.1.27 15:00

板一枚一枚の微妙な曲線が、円形の桶を形づくる=2014年10月20日(井浦新さん撮影)

板一枚一枚の微妙な曲線が、円形の桶を形づくる=2014年10月20日(井浦新さん撮影)【拡大】

  • 刃が湾曲した銑(せん)という道具を両手で握り、桶の外側を削る。銑は奈良時代から使われている古い道具だ=2014年10月20日(井浦新さん撮影)
  • 割り目を整え、繊維を傷つけないように、お腹に挟み込んで、力をかけながら削っていく=2014年10月20日(井浦新さん撮影)
  • ぐい呑み、一合樽、ピッチャーなど、上品で洗練された形=2014年10月20日(井浦新さん撮影)
  • 俳優・クリエイター、京都国立博物館文化大使、井浦新(いうら・あらた)さん(本人提供)

 「木は優しく、人とともに生きていくもの。木造民家も人が住まなくなると突然朽ちる。毎日掃除をし、雨戸を開けて風を入れ替える。ともにいることでお互い長く生き続けられる。木は優しい存在で、実に人に近しいもの」。中川氏の話は、木を一面的に考えていた私の思考を、しなやかに解きほぐしていった。

 「木は生き物なので、曲がっていたり節があったり、年輪や油だまりの違いなど、人間と一緒でそれぞれが異なる。けれども、最終的に同じ製品にしていくのが桶屋の仕事ですから、その個性を整えていくのが難しい」という。

 ≪未来へ 手仕事の「哲学」引き継ぐ≫

 「たがが外れる」という慣用句がある。中川氏は「それを体験していただきます」と、一つの桶を私に手渡した。たがをグッと外してみると、バラバラっとあっけないくらいに、桶が複数の板きれになって散らばった。実際には、たがが外れただけではバラバラにならないよう、細かい竹釘で留められているのだが、桶は基本的に、木が外に広がろうとする力と、たがの絞める力の相互のバランスで形が保たれている。水が入るとさらに木が膨張して密着する。手中の力学。中川氏の柔軟な考え方は、伝統と革新、そして毎日の木との対話のなかで、磨かれてきたのだと感じた。

「用」と「美」と「技」が結実した形

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