中川氏の作品は、現代的なデザインとして欧米でも人気だと聞く。2010年に、シャンパンメーカーのドン・ペリニヨンの公式クーラーに選ばれた木の葉型のシャンパンクーラーは、いままでにないようなシャープな形だ。シャンパングラスにしても、美しいカーブ、持った瞬間の心地よさ、すっとした口当たりが素晴らしい。この「用」と「美」と「技」が結実した形は、どのように生まれているのだろうか。
手仕事の未来に大切なのは、大事なものを見極めることだという。以前は、どこの家庭にもお櫃があった。しかし生活の変化から、お櫃を使う人は国民の1%以下に減った。お櫃そのものに固執するのではなく、お櫃を使う精神、それをつくる技術、素材を大切にする心、そういった「哲学」が大切で、それが宿るものは、時代時代で形が変わる。その「哲学」を引き継ごうとしたのが、氷を入れても外側に水滴がつかず、氷自体も溶けにくい、シャンパンクーラーだった。