【KEY BOOK】「空海 人と書」(春名好重著/淡交社、2060円、在庫なし)
春名好重によって、どれほど日本書道史や書人の特色が手にとれるようになったか、その功績には尽きないものがある。だから空海書においても春名解説には目を通したい。本書は空海の書跡すべてを2ページずつ解説するとともに、大師流にまつわる事績についての視点を50項目以上掲げてわかりやすく解説した。信用できる空海書の事典として、手元においておきたい。
【KEY BOOK】「空海書韻」(榊莫山著/美術公論社、2202円、在庫なし)
ぼくは若い頃に、榊莫山の書に接する心意気や遊び方にずいぶん刺激された。書が愉快に見られるようになったのは、この人のおかげだ。その書もおもしろいと思ってきたが、晩年は骨がなくなったようにも感じた。本書はなんと小説である。書人空海を物語にしたのはこれが初めてだったろう。だから筆師の坂名井(さかない)清川との応酬など、独壇場だ。ただ書人の奥は描けていなかった。