多くの識者が指摘するように、現在のISの問題は、2003年に米軍の空爆によって始まったフセイン政権打倒のイラク戦争から始まっている。ISの政治的活動を担う「官僚」の多くがフセイン政権の残党で、彼らは恐怖による統治技術にたけている。
焼き殺すというヨルダン軍パイロットの殺害方法は、イスラム教の一般的な教義では許されない残虐行為だ。また、人質が殺害に時に着せられていたオレンジ色の着衣は、米軍による捕虜虐待が報告されたイラクのアブグレイブ刑務所で、イラク人捕虜が着せられていたものをまねたとされる。ISのやり方は、「敵」のやり方のアナロジー(類似行為)といえる。
パイロット殺害の報復として死刑が執行されたイラク人の女テロリスト、サジダ・リシャウィ死刑囚は、その兄弟3人が米軍に殺害され、夫とともにヨルダンであの自爆テロ攻撃に加わったという。こうした怨念の構図は、イスラエルとアラブ諸国との対立のほか、キリスト教徒の十字軍遠征の記憶ともオーバーラップし、報復の連鎖を生んでいる。