【KEY BOOK】「バッハの暗号」(ルース・タトロー著、森夏樹訳/青土社、3024円)
ここのところロンドン大学はこの手のマニアックな研究者を次々に輩出している。著者は楽想史の専門で、自分でもクラリネットを吹くのだが、若いせいか資料や楽譜を扱う捌きが颯爽としていて、心地よい。数寄者めいている。それゆえ先駆者フリードリッヒ・スメントのバッハ数秘術に敬意を払いつつも、切った貼ったを辞さず、ぼくとしてはそのへんもおもしろがれた。とはいえこれはまだ序章だ。きっと彼女の才能は次作にこそ躍如するだろう。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)