一口に巡回展と言うけれども、個々の美術館の施設の違いはもちろん、開催される当地ならではの歴史が持つ風土や特色と、そこで展覧会を見るという体験は、本来、切り離せるものではない。地域ごとの固有性や観光遺産を、積極的に展示や表現に活かしていこうという傾向は、近年、ますます強くなってきている。見る者に、同じ鑑賞体験を、全国どこでも等しく与えるはずの巡回展といえども、同様に考えられるようになりつつある。千葉には千葉の、大分には大分の、そして巡回の終点である広島には広島の、それぞれの赤瀬川原平展があるはずなのだ。作家が故人となった今では、なおさらだろう。
火山が作る景色と噴火の猛威
展覧会そのものについては、赤瀬川が亡くなったことも加わり、さまざまな雑誌や媒体で、大きな特集や特別記事が立て続けに組まれたので、ここでは細部には触れない。大分で赤瀬川を見るという体験で、いま通奏低音のように私の心をつかんで離さないのは、美術館から眺めたある風景だ。