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作家の穏やかさと爆発力感じる場所 「赤瀬川原平の芸術原論展 1960年代から現在まで」 椹木野衣 (4/5ページ)

2015.2.23 15:00

赤瀬川原平「患者の予言(ガラスの卵)」1962/1994年、作家蔵(名古屋市美術館寄託)

赤瀬川原平「患者の予言(ガラスの卵)」1962/1994年、作家蔵(名古屋市美術館寄託)【拡大】

  • 赤瀬川原平「ハレーション」2012年(作家蔵、協力:ギャラリー58、提供写真)
  • 「櫻画報」第31号_『朝日ジャーナル』(1971年3月19日号より、個人蔵、提供写真)
  • 赤瀬川原平「四谷祥平館純粋階段」(1972年、作家蔵、提供写真)
  • 大分市美術館の外観=大分県大分市(提供写真)

 午前と午後を費やして、展示のすべてを舐(な)めるように観たあとで、休憩所の椅子に座ると、その対面に、パノラマのようにとられた大きなガラス窓が広がっていた。そこから望めるのは、別府湾から由布岳に至る、火山が形作った山々の連なりと、海の迫り具合だった。なるほど、火山か。実に赤瀬川らしいではないか。そう私は思った。火山は、ふだんは風光明媚(めいび)な景色の一部で、その恵みの象徴である温泉のように、私たちの心身をともに温めてくれる。しかしひとたび噴火すれば、周囲を恐るべき危機にさらし、ときには人の命運さえ左右してしまう。けれども、やがてまた、それらのすべてが嘘のように静まるのだ。

 赤瀬川本人も、ふだんは心温まる趣味人であった。実際にお目にかかっても、過激そうなところなど、なにひとつ感じられなかった。その同じ人物が、あるときは千円札の模型作品で国家の裁きを受け、またあるときは「櫻画報」での筆禍によって『朝日ジャーナル』を自主回収・一時休刊にまで追い込んだのだ。まるで火山のような表現者であった、と言うほかない。(多摩美術大学教授 椹木野衣(さわらぎ・のい)/SANKEI EXPRESS

ガイド:巡回展の「赤瀬川原平の芸術原論展

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