すべての版画が必ずしも曲のイメージに合わせてつくられたわけではないが、悲しく、憂鬱で、どこか不穏さも交じる一部の曲に通じるものがある。
神話、宗教を超えて
およそ100年後のクリンガーまで影響を及ぼしたフランシスコ・デ・ゴヤ(1746~1828年)は、版画によって幻想の世界の扉を開いた先駆者と言えるだろう。
「戦争の惨禍」「闘牛技」「ロス・ディスパラーティス」と並んで「四大版画集」と呼ばれる「ロス・カプリーチョス(気まぐれ)」(1797~98年)の「彼女は飛び去った」には、グロテスクな怪物らしき3人(匹)の背の上で、浮遊する女性を描く。女性の顔は、ゴヤの愛した「アルバ女公爵」に酷似するという。「飛び去った」とは、愛情の喪失(失恋)を意味するとの説がある。