ゴヤは宮廷画家となるが、病気のため40代半ばで聴力を失った。フランス革命をへてナポレオンがスペインに攻め込み、戦禍を目の当たりにする。その後の自由主義者を弾圧する専制政治を避けるように、晩年はフランスに亡命した。多くの辛酸をなめただろうゴヤの作品には、世の中の矛盾や、人間の残酷さ、醜さに対する不信が色濃くにじんでいる。
怪奇や不思議を題材にした作品はゴヤ以前にもあったが、多くは、ギリシャ神話やキリスト教など宗教に基づくものが多かった。ゴヤの作品が明らかに違うのは「近代人としての目覚めから始まっている」(朝木由香学芸員)ところだという。ゴヤのロス・カプリーチョスを評価してやまなかったフランスの詩人、シャルル・ボードレール(1821~67年)は、作品に登場する怪物たちを「人間らしさがしみついている」と表現した。つまり、怪物たちは人間の本性(本質)から生まれているのだ。