ウデヘの猟師たちはみなユーモアがあり、いい顔をしていた。川の漁にも森の猟にもたけた、いわば極東最強の現役狩人。誰ひとり欠けても困る、そんな確かな存在感があった。風土に磨かれたゆるぎない人間の魅力だと思った。
東京からわずか2時間の飛行。
そこに広がる北海道の原風景を思わせるタイガと素朴な暮らし。ビキンへの旅は、川の流れを遡(さかのぼ)るだけでなく、時間を遡るような旅だった。だが、日本との行き来を繰り返すうちに、僕は不思議な思いに駆られ始めた。原生の自然や昔ながらの暮らしへの“懐古”を通り越し、タイガをとり巻く世界こそが、どこか未来につながっているような感覚になってきたのだ。
Back to the future-未来への逆行。そんなイメージである。
連載中に起きた福島の原発事故を機に、その感覚はますます膨らんでいった。先端技術と膨大な資金を結集し、けれど放射性廃棄物の処理策のない原子力発電所。それが地震で崩壊し、後始末が終わらぬまま放射能汚染が続いている。