「イッテツ」。それが猟師イワン・ゲオンカのあだ名だった。漫画「巨人の星」の主人公、飛雄馬の父・一徹のことである。
クラスヌィ・ヤール村の猟師は個性的で、それぞれ独特の風貌と強烈な存在感がある。そんな彼らに、村を訪ねる日本人の仲間がいつの間にか親しみを込めてあだ名をつけるようになった。一徹、青昇龍、長州力…。名前を忘れてもあだ名を呼ぶだけで一人一人の顔がぱっと浮かび、話が通じるのである。改めて並べるといずれも強力なキャラクターばかりで笑ってしまう。
イッテツことイワンは、僕が最初に村を訪ねた時からの知り合いだ。兄のヤコフ・カンチュガとともに頼れる腕利きの猟師だった。“気骨”を感じさせる頑固な風貌。ウデヘの歴史や伝統を人一倍誇りに思い、ビキン川とタイガが大好きだった。以前この連載でも紹介したが、伝統的な舟の製作やハラートと呼ばれる衣装を次世代に引き継ぐことに、静かな情熱を持っていた。
そんな彼がクマに襲われて亡くなってしまった。おととしのことになるのだが、話を聞いても彼の元気な姿ばかりが目に浮かび、僕は今でもなかなか信じられない。