クマを倒す日もあればクマに倒される日もある。川に生かされる日があれば生命を奪われる日もある。それがこのタイガでの生活なのだ。そして何があっても、残された若い猟師たちは、2人をのみ込んだタイガでまた日々生きてゆくのである。
川や森、木や動物との精神的な近さ-。つまり自然との壁のなさがウデヘの文化ではないか、と以前書いたことがある。イワンとヤコフはもう村で会うことはできないが、僕にはまだ2人がタイガの中にいるように思えてならない。
■いとう・けんじ 写真家。1968年生まれ。北海道在住。北の自然と土地の記憶をテーマに撮影を続ける。著書に「山わたる風」(柏艪舎)など。「アルペンガイド(1)北海道の山 大雪山・十勝連峰」(山と渓谷社)が好評発売中。
■ビキン川のタイガ ロシア沿海地方に広がる自然度の高い森。広葉樹と針葉樹がバランスよく混ざっており、絶滅に瀕したアムールトラをはじめ、多様な種類の野生動物が生息している。