自分の庭のようなビキン川のタイガで、しかも狩小屋の脇での事故だった。若い猟師が発見した時にはすでに息絶え、小屋の扉はタイガに向かって開け放れたまま。近辺にクマの痕跡があったという。
≪クマを倒し、倒される 容赦ない自然≫
猟師の狩小屋はほとんどが入り組んだビキン川の水辺に建つ。広大なタイガに紛れ込んだちっぽけな隠れ家のような存在だ。クマが小屋の近くにくることは決して珍しいことではない。ときおり食料庫をクマが荒らすことがあると聞くし、足跡や爪跡、樹上で枝を折りながら木の実を食べた“クマ棚”の跡もそこかしこに見かける。タイガこそがクマの家でもあるのだ。
ただ猟師はクマのほか、シカやイノシシも見つければ銃を撃つ。動物は人と適当に距離をとって行動するのが常だ。イワンを襲ったクマは匂いに誘われたのか、あるいは食料を得て小屋付近に居ついたところでイワンと鉢合わせ、不幸な事故が起きてしまったのか-。一頭の野生動物と猟師の間でその時何があったのか、今となっては知るよしもない。イワンはクマに襲われていなくなり、もう会えなくなってしまったという事実が、じっと横たわるばかりだ。