中国人民銀行の資金供給と軍事費、GDP(国内総生産)の推移<1993年~2014年>。※データ:ストックホルム国際平和研究所(2013年まで)、CEIC。(注)2014年の軍事費は中国国防報告の前年比伸び率に応じた筆者推計【拡大】
人民元は外為市場で超安定だから、外国の企業や金融機関も好んで人民元での取引を拡大する。人民元の外部への持ち出しは一般には制限されているが、特権を持つ中国の国有商業銀行や国有企業は香港を足場に人民元資金をフル活用できる。香港の中国系銀行と香港上海銀行など外銀大手は外貨と引き換えの人民元の多くを中国本土に還流させる。巨額の人民元資産が海外に蓄積されると、自由な人民元市場が本土外に成立する。それを防いでいる。
香港を足場にすれば、党幹部が支配する企業や軍はふんだんな人民元資金を使って、外国の企業、不動産、さらに先端技術、武器まで積極的に買うことができる。先の春節では、中国人団体が東京や大阪などで「爆買い」したが、それは膨らむチャイナ・マネーのほんの一面でしかない。
軍と中央銀行は一体
党指令のもとに軍と中央銀行が一体となっているのだから、北京は人民元パワーを戦略的に活用できる。習近平政権は資源国向けの対外資金援助にも、軍事強化のためにも、人民元を積極利用するはずだ。