【国際政治経済学入門】
安倍晋三首相は消費税率の再引き上げを先送りし、「アベノミクス」を衆院総選挙の争点に据えて勝利した。民主党など野党に対案がなかったためばかりではない。アベノミクスによる恩恵が中小企業や地方に行き渡っていないし、家計収入が実質減になっている状況下にもかかわらず、有権者の圧倒的多数は依然として、アベノミクスによる経済の再生に強い希望を抱いているからだ。安倍首相は2015年、総選挙勝利で強大化させたポリティカル・キャピタル(政治資本)を生かしてアベノミクスを巻き直し、ただちに大胆な景気浮揚策を打つべきだ。
挽回策は賃上げ
アベノミクスに今後残された時間的ゆとりはさほど長くない。消費税増税による景気破壊は、1997年4月、そして2014年4月の増税と2度も繰り返された。その教訓から、首相は来年10月に予定されていた再増税の1年半延期を決断したが、17年4月の消費税率10%への引き上げは不可避だ。首相はそれまでに増税に十分堪えうるだけの力強い成長軌道に日本経済を乗せ、15年間のデフレから完全に抜け出さなければならない。通常の策では無理だろう。