日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は今年10月末に異次元緩和追加に踏み切った。安倍首相周辺は、「黒田さんが首相に消費税増税しても大丈夫と言ってミスリードしたことへのおわび。日銀にはさらなる追加策を期待できる」とみる。
しかし、「異次元緩和=株高」による実体経済へのかさ上げ効果は限られる。過去のデータから試算すると、株価が2倍に上がった場合、米国では実質成長率が15%程度増えてきたが、日本は5%前後の上昇にとどまっている。
消費税率8%の重圧はこれから来年にかけてかかり続ける。挽回策は賃上げである。そこで生きるのが、安倍首相のポリティカル・キャピタルのはずで、首相は経済界や連合への賃上げを前にも増して強く求めるだろう。
グラフを見よう。法人企業統計によると、14年7~9月期に製造業の中小企業の収益が好転したが、従業員給与は依然として前年比マイナスだ。非製造業となると、大手、中小企業とも収益の改善基調がかなり弱まっている。非製造業は内需型であり、実質賃金の減少を最も受けやすい。輸出型の大企業の多い製造業大手の収益は円安とともに急回復するだろうが、産業界全体に賃上げムードが広がる情勢とは言いがたい。