ロシアの軍事ドクトリンは、(1)大量破壊兵器による侵略があった場合(2)通常兵器による大規模攻撃で国家の存立が脅かされた場合-に核兵器の使用を辞さないと定めている。今回のプーチン氏の発言は、核使用条件のハードルを大幅に引き下げる意味合いをも持つ。
ソ連崩壊に伴って独立したウクライナは、1994年のブダペスト覚書で、国内の核兵器放棄と引き換えに米英露から安全を保障されるとの約束を得た。この国際合意を平然と無視するプーチン政権の姿勢は、領土保全には核兵器が必要だとのシグナルを一部の国に与えかねない。
クリミア併合以降のロシアは米欧との溝を深め、まさに核開発を進める北朝鮮やイランとの接近路線を強めている。ロシアは従来、「核拡散は認めない」との立場を堅持してきたが、この基本姿勢にも変化が生じるとなれば、世界の安全保障の構図に激震をもたらすことになる。(モスクワ支局 遠藤良介(えんどう・りょうすけ)/SANKEI EXPRESS)