それだけではない。山口はこの手法を独自にアレンジし、70年代以降、80年代へと向けて日本に姿を現す、高度消費社会という未知の大海のなかへと、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく手足を延ばす女たちを描いた。スケートで街を疾走し、体勢を崩したら遠慮なく足を大きく広げ、口を大きく開けて絶叫してみせる女性像を投げ込んだのだ。それは過去に例を見ないばかりか、当時の日本人にとっては、たいへんなショックであった。
価値観の変容を物語る
しかし、時代は次第に山口の世界観に追いついて行く。そのイメージに乗って渋谷を闊歩(かっぽ)する女性たちが、銀座のいささかお高くとまった「銀ブラ」の担い手に代わって、日本の消費文化を象徴する存在になるまでに、さほど時間はかからなかった。その後、バブルが崩壊し、いかに変形されたとはいえ、渋谷は現在に至るまで、「シブヤ系」「コギャル」「ガングロ」「ゴス」といった女性たちによって依然、引っ張られ続けている。その起点にいるのが、山口はるみの描いた、男たちに対して“遠慮のない”女性たちなのだ。