ルネ・マグリット「白紙委任状」(1965年、81.3x65.1cm、油彩/カンヴァス_ワシントン・ナショナル・ギャラリー、提供写真)。National_Gallery_of_Art,Washington,Collection_of_Mr.and_Mrs.Paul_Mellon,1985.64.24。(C)Charly_Herscovici/ADAGP,Paris,2015【拡大】
同じシュールレアリスムの画家と言われるサルバドル・ダリ(1904~89年)やジョアン・ミロ(1893~1983年)らと比べても、マグリットの画風の違いは際だっている。
例えば、「夢の写真」と自ら名付けたダリの絵には、悪夢に出てきそうなグロテスクな怪物、変形した人体や動物が登場するが、マグリットの描く絵の中では、帽子は帽子、リンゴはリンゴであり、間違いようがない。でも、その組み合わせや出現の仕方に、見る者はハッとさせられるのだ。
「愛の歌」に衝撃
抽象画、ダダに関わったマグリットはジョルジョ・デ・キリコの形而上絵画「愛の歌」(1914年)の複製を見て衝撃を受け、1925年ごろシュールレアリスムに傾倒した。初期の作品「困難な航海」は、キリコの影響が色濃い。キリコが手袋、古代彫刻、蒸気機関車など普通は結びつかないモチーフを並べて描いた「愛の歌」と、手法がよく似ている。