「素」の深さ
私は大の素麺(そうめん)好きである。素麺にかかる手間は、価格のイメージを凌駕(りょうが)する。工程数も多く、文字通り「手」と「間」が必要だ。私は年間を通して素麺を食べるが、やはり初夏から夏にかけてが格別だ。薬味となる野菜類も豊富で、気候との相性も抜群である。今年は、いろいろな器と食べ方を試したいと今から心を踊らせている。素麺の魅力は、なんといっても、コシとのどごしの良さから生まれる爽快感だ。うまさに頭も下がる。調理も手軽で、ざるでもよし温麺でもよしである。そんな私が昨年出会ったのが徳島の名産「半田素麺」だ。200年前の江戸時代にはすでに全国的な知名度を持っていたという逸品である。麺は扁平(へんぺい)、のどごしは妙、味わいは深く、コシもよい。その味に感動し、弊社の徳島合宿の際には半田素麺を手がけるメーカーの一つ、有限会社北室白扇の製造現場を訪ねた。良いものづくりの現場に訪れると感動と興奮を覚えるが、今回はそれに加えて少し異なった感情がこみ上げた。