台所に立つのはごく自然なことという、漫画家のきくち正太(しょうた)さん。「男が料理をすると、『男の料理』やら『~男子』なんて特殊な扱いをされるけれど、普通に自分が食べるものを作っているだけだから」=2015年4月28日(塩塚夢撮影)【拡大】
【本の話をしよう】
人気コミック『おせん』をはじめ、食文化を豊かにつづってきた漫画家、きくち正太(しょうた)さん(54)。自身の食卓を、初のグルメコミックエッセー『あたりまえのぜひたく。』におさめた。カレーそば、アジの干物、いものこ汁…。しみじみおいしい至福の食卓が、そこにある。
《あたりまえの食材(もの)をあたりまえに料理(つく)り、あたりまえにいただく。それがなにより美味しくなによりぜひたくな暮らしだ。》
カバーにそえられたこの言葉に、本書が凝縮されている。“マエスチョロ”こときくちさんと、“おかあさん”こと奥さま。そして編集者。この3人が、主要登場人物だ。「そばは手打ちの生麺、カレーはルーから手作り!」とこだわる編集者をいなすように、きくち夫妻がさらりと肩肘張らない“うちの味”を紹介していく。
食をテーマにした作品を多く生み出してきたが、自身の食卓をまとまった作品として執筆するのは今回が初めて。グルメコミックの大御所としてハードルが上がっているだけに、さぞかし切り口に頭をひねらせたのではないかと思いきや…。「常日頃、『できないことはない』と思っていたから(笑)。背伸びするでも、でっちあげるでもなく、ごくごく自然に。編集者とも『なるだけ日常のものを』と話しましたしね。だから、初回からいきなりカレーそばが出てきちゃったりする(笑)」