周囲の自然にも、美しい形が満ちあふれていた。「ソリュートレ文化・月桂樹の葉」(ヴォルグ、ソーヌ=エ=ロワール、フランス)は、紀元前2万2000~1万7000年ごろに、両面加工された長さ28.4センチの石器。葉のような同型の小さな石器は実際に槍(やり)の先として使われたが、大きな石器は、狩猟者の俊敏さや優秀さを示すシンボルだったとみられている。すでに2万年も前から人間は、シンプルな形に、特別な意味を持たせていた。
やがて、人間自身もその対象となる。紀元前2700~2300年に大理石で作られた「女性の頭部像」(ケロス島、ギリシャ)は、中央に細長い鼻だけが付けられたシンプルな像だ。だが、顔面の繊細な凹凸や顔の輪郭の優しい曲線が、女らしさを十分に表現している。用途については、地母神や先祖にささげられたか、死者の埋葬に供えられた宗教的な意味合いも考えられている。