科学からも刺激
シンプルな形は、悟りや心のよりどころとしても意味を持つようになる。禅僧、仙●(=がんだれに圭、1750~1837年)の「円相図」(19世紀)には、○が描かれ、「これく(食)ふ(う)て、御茶まひ(い)れ」と書かれている。○はまんじゅうにも見立てられ、悟りの境地でもある。
欧米では18~19世紀にかけて、科学が発達すると、自然現象を科学的に解明しようという機運が高まった。例えば、結晶学は、物質の結晶化には一定の法則があり、それぞれ美しい形を作ることを理論づける。幾何学の模型も抽象的でシンプルな美しさを広く教え、芸術家たちは刺激を受けた。
航空学のシンボルともいえるプロペラは、空気をつかまえ、飛行機を前進させる。機能そのものといえる形は、シンプルで美しい。1912年、パリで開かれた第4回航空ショーでプロペラを目にした前衛美術家のマルセル・デュシャン(1887~1968年)は「絵画は終わった。このプロペラに勝るものをいったい誰がつくれるか」と話したという。