大阪都構想の是非を問う住民投票の敗北を受けた記者会見を終え、席を立つ橋下(はしもと)徹大阪市長(左)=2015年5月18日未明、大阪市北区(村本聡撮影)【拡大】
【メディアと社会】
17日に行われた大阪都構想の是非を問う住民投票の敗北で、橋下(はしもと)徹大阪市長の「政治劇場」はひとまず終演となった。大阪府知事に立候補して当選して以来7年余り。橋下氏は政治のバラエティー番組化の主役として庶民の政治的関心を高めることに成功した。半面、実際の政治力学がますます裏に隠れ、政治が賛否だけのワンフレーズで議論されるようになった。それはメディアとりわけテレビの利用、つまりテレビが取り上げやすい題材を提供することによって起きた。その意味では、橋下氏だけを批判してもはじまらないが、今後、「橋下的政治」手法がますます進行し、市民生活との乖離(かいり)が拡大しかねないことだけは注意しておかねばならないだろう。
複雑な社会現象を簡略化
ある一定規模以上の社会の維持には、市民が「自己の安全」と「公益(社会全体の利益)」との調整を代理人(各段階の議員や自治体首長、中央政府閣僚ら)に委託する制度が不可欠だ。同時に、この現代市民中心的民主制が円滑に機能するには、市民個人が「半径5メートル以内の幸せ」思考を超え、日本や世界のことを正しく判断できる情報を持っていることが求められる。情報の入手は個人だけではできないので、情報を充足させるメディア機関が不可欠となる。その機能こそ、社会の羅針盤としてメディアが果たすべき最大の社会的役割である。