旧約聖書から題材を得た「ハレルヤ・シリーズ」(1968年ごろ)には、ヘブライ語と楽器を演奏する男たちが登場して、おごそかな天上の音楽が聞こえてきそうだ。
シャーンは最終的に、芸術作品は個人の心に訴えるものだと気づき、立ち返ったといえるのだろう。
シャーンの描く線は、震えながら伸び、その一本一本が、そこしかない、という場所に位置している。たぶん、それは、石版画に取り組み、何度も何度も練習した経験から来たものだろう。そしてその確かさと美しさが見る者の心をとらえる。
永松左知学芸員は、「テーマ性、批判性とともに人を感動させる力があった作家。若い人にもシャーンの生きた時代を知ってほしいし、ぜひ彼の線の美しさも味わってほしい」と話している。(原圭介、写真も/SANKEI EXPRESS)
【ガイド】
■「丸沼芸術の森所蔵 ベン・シャーン展」 7月5日まで、茨城県近代美術館(水戸市千波町東久保666の1)。一般1080円。月曜休館。(電)029・243・5111。