「明治日本の産業革命遺産」の対象施設の一つである通称「軍艦島」と呼ばれている端島炭坑=2015年4月25日、長崎県長崎市(共同通信社ヘリから撮影)【拡大】
≪政府間対立の火種 戦闘で死傷者≫
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産の登録は、貴重な文化財への注目を高めるきっかけになる一方で政府間の対立の火種にもなってきた。武力衝突に発展し死傷者が出たケースも。登録の是非を決める審議が政治的な論争の舞台となることも少なくない。
カンボジアとタイの国境にあるヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」は、世界遺産登録が認められたことがきっかけとなり、帰属をめぐって両国が武力衝突した。
オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)は1962年の判決でカンボジア領と認定し、ユネスコは2008年7月、カンボジアの申請に基づき、世界遺産への登録を決定した。タイでは「自国領土」との世論が根強く、08年10月には遺跡周辺で両国軍が交戦、11年まで散発的に戦闘が続き死傷者も出た。観光客の足は遠のいている。