ヘルツォークもキンスキーも、クロード・ルルーシュの『愛と哀しみのボレロ』で老けたロベール・オッセンも、日本映画で初めて組んだ平山秀幸も、ソフィア・ローレンもジャンヌ・モローも、ミュウ=ミュウも原田美枝子も、アヴィニヨンで『スサノオ』を公演した勅使河原宏・観世栄夫・野村萬斎も、誰もかもがレイコの過激な魔法に酔いしれた。ぼくが実際に現場を見たのは、小沢征爾が指揮をしたジュリー・テイモア演出『オイディプス王』だったのだが、このときのワダ・エミとの技のコラボレーションは圧巻だった。
特殊メーキャップには二つの方法がある。ひとつは、目と口のみを残して顔の大半を覆うヘッドマスクをかぶせてしまうもので、これは土台の人物の個性があまり関係しない。もうひとつは、演技者の容姿を基本において、人工皮膚によって必要なキャラクタライズをしていく方法で、俳優たちの個性や資質を損なわないようにする。むろんレイコの得意なのは後者である。だからこそ「変身術」なのだ。そのためレイコはスポンジではメーキャップをしない。必ず指でその人物の皮膚をつくっていく。そんな自分の指には「ちっちゃい脳」が微妙に動いているのだという。