ぼくはパリでレイコを知った。『平家物語』の講演をしたあとの交歓会で、声を掛けられた。話してみると、めっぽう深い。この人があの『パガニーニ』の戦慄すべき死体をつくったのかと感心した。世界と日本を本気で跨いでいることも、鮮明に伝わってきた。すぐに意気投合した。ぼくの東京でのパーティにも来てくれた。このときはワダ・エミと石岡瑛子が一緒になったので、3人が静かな火花を散らしているのを感じたものだ。
『ば化粧師』はとてもめずらしい本である。レイコ・クルックにしかつくれない。ぜひとも手にとって、この美しくも過激な魔法の一部始終を覗いてほしい。きっと「人間がもつ内側からの尊厳」や「日本人の誇り」が横溢していることに気が付くにちがいない。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。若いころは作務衣と下駄でどこにでも行った。ピアスをつけ口髭をはやしペディキュアが定番だった。今は黒ジャケットに白シャツが多いが、ちょっとした遊び心で赤いルージュをひいて未詳倶楽部に登場したこともある。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)