「当たり前」という言葉を聞いて思い出すのは「水」だ。私は長年、水泳競技に打ち込んできた。現役時代はプールに水が張っていることに対し、何も考えることはなかった。それは「当たり前」と思っていたからだ。現役から離れ、山登りをする機会に恵まれた。山の上では、飲み水を確保することは容易ではない。入山する前に各自で確保し、何よりも重たい水をザックに詰めて険しい山を登るのだ。人間にとって、そしてこの地球上全ての生物にとって、水は生死を分ける重要なアイテムでもある。
無事登頂を果たし、水を飲んだ瞬間、ふとプールが頭に浮かんだ。良く考えてみると、水がなくなって一番初めに消滅するスポーツは水泳である。大きなプールにきれいな水を張って行う水泳は、なんてぜいたくで恵まれているスポーツなのだろうか。豊かさの象徴であり、平和のシンボルのようにも感じる。そんな中でスポーツと本気で向き合うことができる…。本当に幸せなことだと心から思う。