少年マンガ誌におけるこうした状況は、『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった中沢啓治「はだしのゲン」が平和教育の“聖典”となっていく70年代にはなりをひそめることになる。しかし、「戦記マンガ」の末裔(まつえい)は、90年代以降も、いわゆるコンビニマンガ本の中で生き残っている。また、残酷で波瀾(はらん)万丈なドラマが求められるコンビニ向けレディースコミック誌にも、戦争は、格好の題材としてしばしば取り上げられているのである。
〈いま・ここ〉でこそ
2000年代に入ると、〈いま・ここ〉でこその視点や表現を持った新しい「戦争マンガ」が同時多発的に登場する。本展では、その代表作家として、おざわゆき、今日マチ子、こうの史代の3人を取り上げ、彼女たち-全員女性というのは、必然的偶然だ-の美しく力強い原画約60点を紹介している。
こうのによれば、彼女が戦争をテーマにした作品を発表したのは、戦争体験者の減少が深刻化していた当時、体験者のことばの代わりとして、戦後作られてきたある戦争の言説が、たったひとつの正しい語り方として固定化されそうになっていたことに違和を感じたからと言う。戦争の現実は、もっと多様だったはずだ、と。